ごきげんよう、mofmof inc. エンジニア兼代表のはらぱんこと原田敦です。
ありがたいことに弊社は2020年4月から第6期を迎えることになりました。会社を経営しているといろんな困難にぶつかることがあったりして、時折「あれ、オレなんでこれやってるんだっけ?」って気持ちになることがある。そんなときは、一度立ち止まって自分が本当に何をしたいのか考え直したりしてる。
大体年1回くらいこういうタイミングが訪れるので、だんだんこなれてきたから言語化してみたい。会社のビジョンを定義してゴールを共有しよう!みたいな文脈じゃなくて、自分は個人的にどうしたいのか、って目線での話をしたい。
なぜビジョンを見つける必要があるか?
「ビジョン」を言い換えるなら「自分がどうありたいか」「自分が本当にやりたいことは何か」ということだと思う。それを知ることで自分にとって何が幸福なのかを知ることが出来て、その方向に進むための行動は正しいという根拠になるので、人生の選択に迷いにくくなる。
さて見方を変えると、こんな意見も出てくるのではないかと思う。
「ビジョンなんて必要なくない?ちゃんと食っていければそれで良くない?」
その考え方は誤りではない。ぼくは幸福とは段階的に存在しているように捉えている。ある幸福が満たせた時、その先には別のさらに大きな幸福がある。
食っていければ良い、という価値観はマズローの欲求5段階説の「安全欲求」に当てはまる。この「安全欲求」は下から2番目の低い位置にあって、 実はこれを満たされたら、更に上の欲求を満たしたくなるよねという話。
マズローの欲求5段階説を図付きで解説!各段階に合わせたサービスも紹介|ferret
人は幸福を最大化する行動をとる生き物で、原則的に次の段階の幸福を求め続ける。登り続けるその段階が多ければ多いほど幸福だと言えると思う。つまり自身が登る道筋を知っていれば、より高く、より早くいけるということになる。
お金持ちなら幸福か?
一般的に「お金があれば幸福でしょ?」と容易に考えがちだけど、これも誤りではないが十分ではない。
私は成金の典型とも言うべきとても大きな買い物をした。イエローのランボルギーニだ!もう全てが素晴らしかったが、それでも心からの満足を与えてくれるものではなかった。
心に満足を与えてくれるもの、それは Rubyのプログラミングであり、 Basecampを構築することであり、 Signal v Noiseに投稿したり、写真を撮ることだった。つまり、今まで何年にもわたって続けてきた自分の性に合ったライフスタイルそのものだった。
引用元: 私が億万長者になった日ーーRuby on Railsの生みの親が見つけた人生で「最良のもの」 – BRIDGE(ブリッジ)
原文: The day I became a millionaire - Signal v. Noise - Medium
これはRuby on Railsの生みの親であるDHHことDavid Heinemeier Hansson氏の言葉だ。
ぼくは大してお金持ちでもないし、DHHに比べればミジンコ、いやミトコンドリアくらいのもんだけど、多少頑張れば大抵の欲しいものは買える。でも、自分の収入が上がるのに反比例して欲しいものはなくなっていった。
高くて広くてイケてる家に住みたいわけでもないし、高級レストランで贅沢したいわけでもないし、バケツいっぱいのイクラを食べたいわけでもないし、DHHのようにランボルギーニを買ったりすることはない。なんなら毎週末に500円分くらいのスナック菓子を買ってNetflixを観ながらダラダラ過ごすだけで至上の幸福ですらある。
お金で得られるのは、より上の段階の幸福を目指すための土台となる部分だけでしかない。いくらお金を持っていてもそれほど幸福にはなれないけど、お金がなければ最低限度の幸福を得ることが出来ないという性質のものだ。
ビジョンを見つけるのは難しい
自分がやりたいことは自分自身が知っていると思いがちだけど、案外そうでもない。人は生きていく中で周囲の色んな価値観に左右されながら生きている。隣にいる同僚がマイホームを買ったら自分も欲しくなったりするし、どこぞやのIT社長が美女芸能人と結婚したら、IT社長に憧れたりもする。ところで朗報だが2019年の7月頃、石原さとみの隣が空いたという情報があるぞ。
例えば、ぼくが高校生のときに友人が250ccのバイクに乗っていたのをみて、自分もどうしてもバイクが欲しくなって、親に頼んで100万近くのローンを組んで買ったことがある。当然免許を取るにも10万円以上かかった。ところが実際に手に入れてみると、交通手段として乗ったりはするけれど、ツーリングに行くとかカスタマイズするとかを一切しなかった。正直冬は寒いし、夏は暑いし、つらいことづくめだ。唯一のメリットといえば、友達や女の子の前でドヤれることくらいだ。
結局18歳で車の免許を取ってからはほとんど乗らなくなった。バイクは自分にとってテンションが上がるものでも、好きなことでもなかったということだ。こういった体験は他にもあって、今自分が渇望しているものが、本当に自分にとって価値があるかどうかは疑うべきだと言える。
どうやって本当にやりたいこと=ビジョンをみつけるのか?
自分のビジョンを見つけるには、以下2つのことについて自分に問いかけてみると良い。
- もし今1兆円の資産があって一生働く必要もないとしたら何をしているだろうか?
- 過去の自分がどのような選択をしてきたか?
1. もし今1兆円の資産があって一生働く必要もないとしたら何をしているだろうか?
生活のことを何も気にしないで生きていける状況下で、自分がやっていることこそ自分が本当にやりたいことだと思う。
以前に会社のミッションを定義しようと思ったとき、自分が本当にやりたいことは何か言語化しなければならなかった。そのときやったことは、「もし今1兆円の資産があって一生働く必要もないとしたら何をしているだろうか?」を自分に問いかけてみることだった。
結果、以下のように言語化されることになった。
すると、次の新規事業の製品のプロトタイプを開発している自分が想像できた。 「世界を変えたい」とか「ビッグになりたい」とか「誰かが抱えている深刻な問題を解決したい」といったビジョンもとても素敵なビジョンではあるものの、ぼくにとっての原始的な欲求は「作る」ことでした。
「新しいテクノロジーを使って、他の誰もやっていないようなユニークな製品を作り、使う人をハッピーにする体験こそが原点であり、それに取り組み続けている組織ってめっちゃカッコいい!」ぼくはそう考えています。 ここにおもしろい技術がある。 だからこの技術を使って、おもしろい事業を作りたい。 ただシンプルにそれを追求したい。
2. 過去の自分がどのような選択をしてきたか
「自分が本当にやりたかったことは大抵既にやっている」これが一つの答えだと思う。過去の自分の行動選択から逆算することで、自分の生き方の嗜好性を認識することが出来る。
改めてDHHの言葉を引用したい。
心に満足を与えてくれるもの、それは Rubyのプログラミングであり、 Basecampを構築することであり、 Signal v Noiseに投稿したり、写真を撮ることだった。つまり、今まで何年にもわたって続けてきた自分の性に合ったライフスタイルそのものだった。
DHHと比べるとミトコンドリアレベルのぼくだけど、一寸の虫にも五分魂、ミクロのミトコンドリアにも1ビットくらいの魂があるので、この言葉には大変共感できる。
ぼくが20代半ばの頃、不労所得で生活することや、ハワイのビーチでのんびりしながらOSS開発したりする生き方に憧れていた時期もあった。だけど、会社を立ち上げて、分からないなりに試行錯誤繰り返して事業を立ち上げて行く最中でその楽しさと喜びを知り、かつての憧れはどうでも良くなってどこかへ消失していた。ていうかハワイそんなに行きたくないや。不労所得はともかく。
不労所得で生活することは今でもまあ出来る。ハワイでのんびりOSS開発もたぶん工夫すれば出来る。でも現にぼくはそれを実現するための行動は何もしてきていない。それが出来る状態になってさえそれをやらない。つまりそれは自分にとって本当にやりたいことではなかったと言える。
ぼくの好きなことはプログラミングだ。お金がもらえなくても、休日の自分の時間を使ってまでも、ぼくはプログラミングをやりたい。自分が作りたいと思ったものを自分の手で作り上げる喜びは他では得難い体験だ。
ここで少し翻って話をしてみる。
ぼくは2015年4月システム開発の会社としてmofmof inc.を立ち上げ、一プログラマから経営者という立場に変わった。自分の主な仕事がシステム開発ではなく経営になるということに少しだけ悩みもした。おそらく業務でプログラミング出来る時間は減っていくことが容易に想像出来ていたし、実際そうなった。
それでもなお、経営者という立場を選択した理由はなんだったのだろうかと考えてみたことがある。深堀りに深堀りをしていって、最終的にたどり着く答えは、「経営者」という未知の世界を知りたい、自分には今やれること以上の何が出来るのかを確かめたいということだった。そしてこの欲求を突き詰めていくと「知的好奇心」を満たしたいという原始的な欲求へ収束した。
このようにして自分の行動選択の原則を認識することが出来た。
まとめ
- 個人的なビジョン=自分が本当にやりたいことを見つけることは自身の人生をより豊かにする
- 「もし今1兆円の資産があって一生働く必要もないとしたら何をしているだろうか?」を問いかけてみよう
- 「過去の自分がどのような選択をしてきたか」から自分の行動選択の原則を見出してみよう
- ビジョンが見えたら、次に自分が何をすべきかの具体的な行動を決めよう