どんな開発プロジェクトでも何かものを作る限りは、そのプロダクトで何を目指しているか、明文化されているいないに関わらずあるはずです。
それを明文化するためのドキュメントとしてインセプションデッキというものがあります。これはアジャイル開発における要件定義書のような位置付けで、10個ページのスライドを埋めていくシンプルなもの。
mofmof inc.は開発会社という立場でプロジェクトに参画することが多いわけなのですが、一般的な受託開発会社とは違って、決められた通りにものを作ればOKという考え方ではなく、そのプロダクトのゴールを実現することを目指した作り方をしています。
ゴールの実現を目指すには、ゴールがどこにあるのか強く関心を持たなければなりません。そのためにインセプションデッキ・エレベーターピッチは大変役に立っています。
この記事では、その中の1つであるエレベーターピッチの作り方ついて解説しますね。
エレベーターピッチとは何か?
エレベーターピッチというのは、忙しい投資家に対して、エレベータに乗っている30秒間という短時間で起業家がプレゼンするというシーンを指しています。
30秒間という短時間にエッセンスを詰め込むからこそ、プロダクトの本質を表現した文章になるので、プロダクトのイメージを強く形付けることが出来ます。
インセプションデッキではそれを応用して、ドキュメントにまとめちゃおうという発想ですね。
エレベーターピッチは、テンプレに穴埋めしていく形でやっていくのですが、以下の7個の穴埋めがあります。
- ニーズ
- 顧客
- プロダクト名
- カテゴリ
- 価値
- 競合
- 競合との差別化
エレベーターピッチの作り方
ぼくが趣味で作っているアイデアストックというアプリの例にして、実際に書いていきますね。
ニーズ
潜在的なニーズを満たしたり、潜在的な課題を解決したりの部分。
どんなニーズがあるかの仮説を入れていきます。
企画職の人や、個人アプリ開発者、起業家などをイメージすると、一人でアイデアを出して一人で立ち上げていく姿が見えたので、アイデア出しが煮詰まってしまったときに、アイデアを増やしたい、というニーズがあるのではないかと考えました。というか自分にそのニーズがありました。
もっとアイデアを増やしたいと入れます。
ちなみにエレベーターピッチ全体に言えることですが、基本的には全て仮説で入れていっても問題ないです。事実かどうかは検証してみないと分からないので、アレコレ悩んで時間を費やすより、現時点の仮説を入れてしまって、反証されたらそのタイミングで修正すれば良いです。
顧客
対象顧客の部分。
誰をターゲットとするかを記入します。「全ての人々」みたいな抽象的な範囲ではなく、なるべく具体的な粒度で書きましょう。
ここで書かなかったからといって未来永劫ターゲットからはずすというわけではないので、一番最初に売り込みたい顧客をイメージして絞ると良いです。
アイデアを出す職種の人として新製品企画者としました。最初は起業家としていたのですが、起業家だけをターゲットにするとアプリの方向性が偏りそうな気がしたので、少しターゲットを広めにした。
プロダクト名
プロダクト名の部分。
言わずもがな。好きなプロダクト名を入れればいいじゃない!
カテゴリ
プロダクトのカテゴリーの部分。
簡単そうに見えてちょっとだけ奥が深いカテゴリ。なぜかというと、そのプロダクトをどのジャンルに位置付けるかによって戦うベき相手が変わるからです。
アイデアストックの例で言えば、「ノートアプリ」にすると競合はEvernote辺りになるけど、「アイデア発想アプリ」にすると競合はマインドマップアプリ辺りになる。
つまり、どこを戦場に選ぶか?ということですね。
アイデアストックでは、アイデア探しツールとしました。
価値
重要な利点、対価に見合う説得力のある理由の部分。
ユーザーがなぜそのプロダクトを使うのか?を記入する部分。プロダクトのコアな部分です。
アイデアストックは、ノートアプリではなく、煮詰まっちゃったときにアイデアを増やすためのアプリなので、既存アイデアから他のアイデアを派生させて増やすこととしました。
競合
代替手段の部分。
ここには競合アプリ名(サービス名)を入れると非常にわかりやすい。競合サービスが存在しない場合は、ユーザーが現在課題をどうやって解決しているかを記入すると良い。
マインドマップやアイデアメモアプリとしました。どちらも一人でアイデアを発散したり増やしたり出来るものです。
競合との差別化
差別化の決定的な特徴の部分。
「価値」の部分と重複しやすいので注意が必要。価値は競合サービスと同じでもOKだけど、この部分は競合にはないものを書くと良い。
アイデアストックでは自分のアイデアから連想される新しいアイデアが自動的に増える機能とした。
エレベーターピッチ完成
これで完成!簡単ですね!
良くない例
エレベーターピッチを作るときに注意する必要があるのは2点。
1点は、なんでも盛り込んでしまい全部盛りになってしまうケース。
例えば価値の部分に、「アイデアを高速にストック・タグ付けが出来て整理がしやすく、更に検索機能があって大量にアイデアを貯めておくことが出来る」みたいな機能列挙をしちゃダメ。
ウリをたくさん書きたい気持ちは分かるけど、たくさん書けば書くほどユーザーに響かないし、プロジェクトのチームメンバーにも伝わりづらくなってしまう。
2点目は、それぞれの項目が重複しまくるケース。
特にニーズと価値の部分と競合との差別化の部分が重複しやすいけど、重複はプロダクトを説明する言葉としては全く役に立たない情報なので、可能な限り過不足重複なく書くことに気をつけると、より人に伝わりやすい強い文章になります。
何かを生み出すときはエレベーターピッチを書こう
開発プロジェクトに限らず、新商品企画や、事業立ち上げなど、何か新しいものを生み出そうとしているシーンで、エレベーターピッチは非常に高速かつ的確にイメージを形付けられるので、やってみるのをオススメします。
例え個人開発アプリだったとしても、自分が定めたプロダクトの軸をいつでも思い出せるように書いておくのが良いです。マーケティングするフェーズや、ピボットが必要なときに、冷静に分析するのに役に立ちます。
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