開発「仕様通りに出来上がりました!検収お願いします。」
顧客「うーん。こうじゃないんだよなー。ここって直せませんか?」
開発「そういう仕様なので追加費用をいただかないと無理です。」
顧客「いや、でもそれじゃ困るんですよ。。。」
開発「いやいや、だってこうだって言ったじゃないですか」
システム開発の業界に従事している方ならあるあるーって話なんじゃないかと思います。
こんな経験がある方はぜひ今一度自分達が提供したものが本当に「価値」を実現していたかどうか、細い目で悠久の時に思いを馳せながら、ゆったりとリラックスした姿勢で続きを読み進めてください。
ところで価値とはなんでしょう?
ソフトウェアにおける価値とは非常に重要な概念であるにも関わらず、その抽象性の高さから、あまり議論の中心には上がることがなく、なんとなく暗黙的ままでプロジェクトが進行していることが多い。
今回は、普段システム開発に従事しているプログラマや、プロジェクトマネージャー、ひいてはプロダクトオーナーなど、システム開発に直接携わる人向けに「価値とは何か?」という話を書きます。
ソフトウェアにおける価値とは何か
改めてもう一度。価値とはなんだろう?
普通の人はそんなこと聞かれても「は?」とか「なんか意識高いキモいヤツが現れたぞ!逃げろ!」としか思いませんよね?
話を掘り下げるために対象物を用意しましょう。弊社の一事業である、AIチャットBotサービス「My-ope office」の価値がなんなのか考えてみよう。
My-ope officeで想定している1つ目の価値は、従業員が業務に関して何か不明点が発生したときに、情報を探したり、誰かに質問することを躊躇したりという時間を減らし、組織として業務の効率をアップすること。
2つ目の価値は、総務部や情シス部など、質問を受ける側が、度々同じような質問を受け、その度に同じような回答を繰り返す、というオペレーションのムダを削減することです。これにより、担当者は自身の業務を進める時間をもっと確保出来るようになること。
どんな課題を解決出来たら、ユーザーが心から喜ぶのか?それを突き詰めて表現した言葉が「価値」を表します。
大きく分けると価値にはプロフィットセンターかコストセンターかで二種類に切り分けることが出来て、前者は利益を増やすもの。後者はコストを減らすものです。従ってMy-ope officeは後者にあたる。
利益かコストか、そのいずれかを大きく変動させるポイントが何か?それが価値に直結する。ちなみにコストには金銭的なコストだけでなく「心理的コスト」というものも含まれたりする。
煩わしいと思っていることをいかに減らすか?という点も価値につながるので、数値的なものだけでなく人の心理にも着目するとなお良い。
どうやって価値を理解するのか?
価値を理解するには自分がユーザーのつもりになって想像し、感じる必要があります。ぼく自身も作り手なので分かるのですが、作り手はこれが苦手なことが多いです。「機能を実装する」という手段にフォーカスし過ぎて目的を想像することが得意じゃない。
せっかくなので、それっぽいこと言っておくと、価値とは「点」なんですよ。「面」ではなく「点」。
「My-ope officeを導入すると業務が改善してコストが減るんですよ」という言葉は面でしか語っていないから、この言葉だけではユーザーがどういう風に心から喜ぶかが想像できない。
価値を「点」で表現するには、アジャイル開発におけるドキュメントの一つ「インセプションデッキ」の「エレベーターピッチ」というのがオススメ。詳しい説明は省きますが、どんな目的でどんなゴールを達成したいかを表現するものです。
ポイントとしては、顧客に作っておいてもらうだけでなく、開発サイドでも作ってみるのが非常に良いです。自分が立てた価値の仮説と顧客が考えている価値にどれだけズレがあるか分かるので大変面白い。
あとは普段から「価値」を理解しようという習慣を身につけるべし。価値を理解出来るようになるためにやると良いのはこんな感じ。
- まず一番最初に、自分は「価値」を理解しているという思い込みを一旦全て捨てる
- 作って欲しいものの相談を受けたら、一番最初にどの点が「価値」なのか仮説を思考する
- 思考した仮説を相手にぶつけてみる。「そうそうそう!それなんですよ!」というちょっと大げさな反応が出たら当たり(反応が小さくてもハズレとは限らない。個人差がある)
- 上記のことを開発相談されるごとに繰り返し、3の当たり精度を上げていく
これをやっていくと確実に価値を見極める仮説思考が鍛えられていくのでぜひチャレンジしてみてね。
計測したわけではないけど、こういう話が出来る人は実は少ないので、作り手サイドの人は受注率が上がるかも知れない。少なくともぼくは何か外注する時、こういうことをちゃんと考えられる人にお願いしたいと感じる。
成果物の実現ではなく、価値の実現を目指せ
以前にイケてるエンジニアの振る舞いについて書きましたが、イケてる人はこの「価値」を確実におさえて、そこへ向かって仕事をしてる。そうでない人と決定的な程に差がある。
「言われた仕様の通りに作ったのに、顧客からこんなんじゃないって怒られた」みたいなトラブルは、この業界あるある話だけど、そもそも「価値」を実現しようとしないで「成果物」だけを実現しようとしてるからそうなるんじゃないかと思ってます。
作り手側の人で、あ、こういう経験あったな、と思った人は今一度自分は顧客が求める価値を理解して、価値を実現するためにものを作っていたかどうか自問してみてもらえたらいいな。
と若き日の自分に言いたい。
こんな話を書いていたらインセプションデッキを作り方を学ぶ勉強会を企画したくなってきた。もし「聞きたい!」という方もしいたら個別にメッセージがWEBサイトから問い合わせいただければ、開催時に招待するかもしれない。